ひたすら刈り続けるも終わらない稲刈

 塩田平もすっかり秋めいてきました。朝起きると寒い位で、そろそろペチカに火を入れたくなります。幸い雨が降らずにいてくれたので、残った田んぼも少しずつ乾いて来ました。先週は3枚目の田んぼの稲刈をしました。3枚目と4枚目は倒伏がひどく、稲を手で引き起こしながらの稲刈です。田面も充分乾燥していないので、効率が上がりません。稲刈機(バインダー)の性能はそれなりに高く、自分で引き起こしながら刈ってくれるので、そのままでも8割程度は刈れます。ただ無理に刈っても、引き起こし損なった稲は上の方で刈り取られてしまい、脱穀機でうまく脱穀できずにロスになってしまうことが多いのです。合計で3割程度は減収してしまうでしょうか。これまでは、仕事の片手間農法だったので、時間効率優先でした。多少のロスがあっても、時間がかからなければそれで良い、という農法です。その代わり広めに作って、自家消費分プラスアルファ収穫できれば十分でした。

 ところが福島の原発事故のおかげで、ポリシーを変更しなければならなくなりました。東北関東の農作物のかなりの部分が放射能に汚染されてしまったからです。100ベクレルまで大丈夫だとか、100ミリシーベルトまで大丈夫などと言っている困った人達もいますが、放射能は被曝量の大小にかかわらず、被曝が増えればそれだけ病気や死ぬ人が増えて行きます。誰に当たるかというだけの問題です。わが家も農地の土を測るとセシウムが数十ベクレル検出されます。各田畑の作物を測定していますが、幸い作物には、検出できるセシウムは含まれていないことが分かりました。粘土質土壌のため、移行が食い止められているようです。ちなみに測定下限は1-2ベクレル/kgです。セシウムフリーの農作物を少しでもたくさん作れば、それだけ汚染された作物を食べずにすむ人が増えるわけです。収穫量優先に目標変更せざるを得なくなりました。

 というわけで、できたお米はできるだけたくさん収穫したいのです。先週末の日曜日に、2枚目の田んぼの乾燥が遅れていた稲架1列の水分を計ると15.4%でした。気持ち高目ですが、天気が良ければ水分は下がり続けます。水分は重要で、脱穀は最優先の作業です。翌日は仕事で作業できないので、脱穀することにしました。午後一杯かかってしまいましたが、米袋5袋で102キロの籾が収穫できました。既に脱穀が終わった分は、コンバイン袋に収穫したままだったので、夜、米袋に移して計量しました。7袋で157キロありました。58キロ精米済なので、全部で籾付きで317キロの収穫です。籾摺すると25%減ったので、玄米で約240キロ、4俵の収穫ということになります。田んぼの広さが5畝なので、反収8俵。慣行農法では平均的な収量ですが、2割下がると言われている有機農法としては良い数字です。

 収量が増えた分、毒入りのお米が食べられる量が減るので、努力した成果があったとも言えます。残念ながら、全ての田んぼでこの収量ではありません。1枚目はまだ正確に集計していませんが、近い反収になりそうですが、3枚目は、反収換算で6俵程度かも。問題は今刈っている4枚目です。残念ながらこの田んぼは、ほぼ全面倒伏してしまった上に、雑草の稗が大量に生えてしまいました。さらに、水が抜けにくく、バインダーが例年スタックしてしまう田んぼです。今年は非常に沢山の稲が倒伏してしまいました。倒伏した稲は、一株ごとに引き起こしながら刈り取らないと、収量が減ってしまいます。大変手がかかるのですが、収量優先に切り替えた以上、しかたありません。1割ほど刈ったところで雨が降ってきてしまいましたので、乾燥するまで稲刈はお預けです。

 去年は野菜に力を入れたらお米に手が回らず、お米の収量はかなり少なくなってしまいました。来年減反なので来年の分のお米も今年作っておかなければならないという事情もあって、今年はお米に力を入れたら野菜があまりできませんでした。農業に割ける時間が限られているので仕方ありませんが、なかなか難しいものです。もう秋なので、今から種蒔きできる野菜は限られていますので、来年の課題になりそうです。課題と言えば、こんなに稲が倒伏したのも初めてで、原因をあれこれ考えています。多分肥料が効き過ぎたのでしょうが、多肥栽培というわけでもなく、例年と同様の施肥量でした。天候によって肥料分の効き方は変わるので、天候もありそうですが、これまでの有機栽培で地力が付いてきて、その分肥料を控える必要が出て来たのかもしれません。来年は減反ですので、再来年施肥量を良く考えたいと思っています。

雨で稲刈できないので麦蒔きの準備

 なんだか毎晩雨が降る塩田平です。4晩連続で雨が降り、これから稲刈の田んぼは水が溜まってしまいました。そもそも水が抜けにくい田んぼなので稲刈が遅れているということもあるのですが、2日ほど雨が降らなくても水が減りません。お手伝いしてくれる人がいたので、3枚目の田んぼを週末に刈ろうとしたのですが、外周1列の2/3刈るだけで3時間かかってしまいました。倒伏した稲が濡れて重く、刈りやすいように起こすのに時間がかかることと、土がぬかるんで、バインダーが滑ってしまうのです。こんなに水が抜けないのはおかしいと思って調べてみると、田んぼの入口で水が止まっていませんでした。雨が降るたびに水が流れ込んでいたようです。排水はチェックしていたのですが、いつまで経っても水が抜けないわけです。

 とにかく水が引くのを待つしかありません。水を止めて排水溝を切り直しましたが、また夜に雨が降ってしまいました。田んぼの中の乾燥しやすいところをまず刈ることも出来るのですが、倒伏が激しいのでそれも大変です。バインダーは外周から回りながら刈るように作られているので、稲束を排出する方向が決まっています。往復して刈ると、次に刈る稲の上に排出してしまい、稲束を移動させないと次の列が刈れません。それに倒伏している稲は、人が向きを揃えてやらないと刈れないので、往復するとその度に逆向きに揃え直さなければなりません。大変過ぎます。稲刈を延期することにしたおかげで、お手伝いの人には4箱ほど大根葉を収穫してもらい、福島に送ることができました。

 稲刈が終わった田んぼは乾いています。来年は減反で、稲刈が終われば2枚の田んぼで麦を作ります。先にその準備をすることにしました。小麦を大面積作るのは初めてなので、肥料設計から勉強です。長野の栽培指針によると、反当窒素4kgリン酸4kg苦土石灰100kgとのこと。有機栽培は肥料も全て天然のものです。油粕4袋(80kg)、グアノ2/3袋(14kg)、牡蠣殻石灰4袋(80kg)ぐらいです。広い方の田んぼが油粕3袋、グアノ3/5袋、牡蠣殻石灰3袋、狭い田んぼが油粕2袋、グアノ2/5袋、牡蠣殻石灰2袋で作ってみて、様子を見ましょう。有機資材は有効成分の濃度が低いので、大量に散布しなければならず重労働です。使っている肥料は、ライムソワーという、石灰を撒く機械で撒けることも理由の一つです。

 まずは排水のための弾丸暗渠を引くことからです。どうしても水が引かないところが残ってしまう田んぼがあり、オークションで安い中古を見かけたので、その排水のために買ったのですが、麦も排水が重要なのです。初めて使うので、トラクターに装着して調整するのに半日かかってしまいました。実際に使ってみて、またリンクロッドやユニバーサルジョイントの長さを変更しなくてはなりませんでしたが、一応引くことはできました。ただ、30センチ以上の溝が切れるはずなのですが、25センチ位しか切れません。もう少し調整のしようがあるのかもしれませんが、とりあえず今年はこれで良しとしましょう。次は肥料を混ぜ合わせてライムソワーで撒きます。前に使った畑に置いてあったライムソワーを運んできてちょっとショック。撒き残した油粕に雨水が入って固まっています。

 散布できないし、量の調整ができません。週末来ていた母も一緒に、3人で粘土状になってしまった油粕を掻き出しました。散布量を調整する細かい隙間をきれいに掃除するのに1時間以上かかってしまい、暗くなってしまいました。肥料撒きはまた翌日です。雨が降っても大丈夫なように、シートでカバーして終わりにしました。翌日は快晴でした。早起きして、肥料を撒き始めます。わが家のライムソワーは耕耘機で引っ張るタイプです。クボタのT7という古い耕耘機があり、それで引っ張ります。最初は肥料が均等に落ちませんでしたが、撒いているうちに段々きれいに撒けるようになりました。残念ながら会社の行事があり、9割撒き終わったところで出かけました。

 翌日続きをやる予定でしたが、2枚目の田んぼの稲の乾燥が進み、水分が14.5%まで下がってしまいました。すぐに脱穀しなければなりません。明るいうちに終わるつもりでしたが、いつもの読みの甘さで終わった時は真っ暗。あきらめて翌朝早起きして、肥料を撒き終わりました。反省点は、暗渠を掘った後が凸凹で、肥料が撒きにくいこと。それに肥料を撒く時にせっかく掘った溝をつぶしてしまいます。どうも先に肥料を撒いてから暗渠を掘った方が良さそうです。もう1枚の田んぼでは逆の順番に作業しましょう。この後、トラクターで耕起してから、トラクターに播種機を取り付けて麦の種を蒔きます。その間に雨が降ってしまうと、田んぼなので土がドロドロになってしまいます。稲刈同様、こちらも天気との相談です。

 麦の準備をはじめたら、そのまま続けたいところですが、外周の一部だけ刈ったまま1週間近く経ってしまった3枚目の田んぼも乾き始めました。まずこちらからです。稲も土もほぼ乾燥してくれたおかげで、全部刈り終わるのに3時間もかかりませんでした。稲架を立てて、稲架掛けはパートナーに任せ、4枚目の田んぼの稲刈を始めました。ただ、こちらはさらにひどい倒伏。バインダーの性能に期待してそのまま刈ってみました。3条ほど刈ったところで暗くなりました。さて、明日からどうしましょう。刈れないことはありませんが、脱穀する時に無駄が多そうです。引き起こしながら刈れば良いわけですが、この田んぼは広いので、かなり大変です。麦蒔きの準備が追いつかなくなるかもしれませんが、やはり基本に忠実が一番でしょうね。

雨の合間に進む稲刈

 台風の影響もあり、最近塩田平では毎晩のように雨が降っています。秋雨の時期なので仕方ありませんが、この時期の農作業は天気次第です。幸い昼間は晴れることが多かったので、この週末に2枚目の田んぼの稲刈が終わりました。終わりかけで台風の雨が降り出しましたので、少し残った作業がありますが、ほぼ終わったと言えます。台風の雨で稲架の一部が折れてしまいましたが、修理できました。先週末で面積的には1/3刈り終わり、1/5脱穀が終了というところです。家の近くの残った2枚の田んぼの稲ももう刈り入れ時です。例年なら、稲刈が終われば一段落なのですが、来年全部の田んぼが集団減反に入ってしまったので、麦を蒔かねばならず、稲刈を急ぎたいところです。ただ、運搬車や稲刈機(バインダー)のエンジンがかからなくなるなど、機械類のトラブルが多発しています。

 雨の影響で田んぼに入れない日は、ジャガイモの掘り残しを覆っている雑草を刈りました。畑も土が乾いておらず、草刈機が滑ってしまって草刈が進まなくて困りました。この水分ではジャガイモは掘れません。田んぼが乾けば稲刈を優先したいところですが、さすがにジャガイモから芽が出そうです。芽が出るとすぐに食べられなくなってしまうので、どちらを優先するか悩ましいところです。昨晩も雨が降り、ジャガイモはとても掘れそうにありません。1枚の大きな田は水が溜まってしまい、こちらもどうしようもありません。でも、もう1枚の小さな田は表面に水が無く、バインダーは若干のぬかるみなら、刈れるので、こちらの田んぼの稲刈をすることにしました。ところがバインダーのエンジンがかからない。キャブレターのガソリンを抜いてみると何と水です。

 水を抜いたらエンジンはかかりましたが、残念ながらこの田んぼの稲は激しく倒伏しています。稲を手で引き起こして、バインダーで刈れる方向に向け直してやらねばならないのと、畦際一杯まで稲が立っていて、外周は手刈りしなければならなかったので、3時間がかりでバインダーで1周も稲が刈れませんでした。例年なら、少々倒伏していても、無理矢理バインダーで刈り取ってしまい大分お米を無駄にしていました。時間が無いので時間効率を優先していたのです。でも原発事故以来、安全な食べ物を少しでもたくさん作りたいので、収量を優先するようになりました。耕作している全ての農地で、最低1作物は放射能測定に出していますが、幸い塩田平で作った作物からは、これまで放射能は検出されていません。

 最初に刈って先週脱穀をはじめた田んぼは、今年初めて借りた田んぼです。収穫したお米をゲルマニウム測定器で測定してもらいましたが、検出下限1ベクレルでセシウムは不検出でした。脱穀の方は無事終了しました。新米が残り少なくなったので、週末に籾で60キロ精米してもらい、45キロの玄米になり、精白してもらったので、40キロぐらいの白米になったことでしょう。なかなか人に送る準備をする余裕がありませんが、とりあえず子供達に少し送りました。藁の回収までは終わっていませんが、次の田んぼの稲刈が優先です。藁にはとりあえずシートをかけておいたのですが、風で飛んで雨に当たってしまいました。また拡げて乾燥させねばなりません。

 畑の方は、白菜の発芽が悪いと言うか、小さいうちに虫に食べられてしまい、半分も残っていません。野沢菜は、1畝はうまく発芽しましたが、もう1畝は失敗の模様。発芽しなかった場所には他のものを植えたいところです。ニンニクや葱、豌豆などの種もそろそろ蒔きたいところですが、稲刈で忙しくそこまで手が回りません。発芽が遅かった法蓮草もやっと芽が出てきました。野沢菜と法蓮草は同じ日に種を蒔いたのですが、野沢菜と大根葉はすっかり大きくなって、間引き収穫していただいています。ずいぶんと成長が違うものです。父が家の近くの畑に蕪や法蓮草を蒔いてくれたので、冬越しの法蓮草も何とかなりそうです。動物に一部を食べられてしまった薩摩藷ですが、先日やっと電柵を設置しました。これで被害が止まるとよいのですが。