畑を作る前に、自分なりに資料を集めてみて、これだ!と思ったのが永田農法だったのです。
一番大きな理由は、堆肥を使わず、どんな土でも液肥だけで野菜が作れることでした。
堆肥を入れるのは簡単ですが、一番心配だったのが、臭いです。完熟堆肥なら臭わないとNHK教育放送の『野菜の時間』では強調していますが、近くのホームセンターには、完熟堆肥という商品はありません。(堆肥や野菜の土はいくらでも、少し高いなという値段で売っています。)
昔に住んでいた公団の空き地で、野菜を栽培している方がおられ、ナスやキュウリなどに目が行くより先に、遠くからでも感じる臭いと大きなハエが嫌だなぁと思っていました。完熟堆肥じゃないから、臭いとハエがでるのかもしれません。ともかく、完熟堆肥なるものが手頃に買えない状況で、ご近所に迷惑をかけるかもしれない畑作りだけは避けたかったのです。
我が家の庭は、前の住人が元園芸好きだったようですが、めんどうになってからは手入れを完全に放棄された、草ボウボウで足の踏み場もない姿でした。リフォーム業者に雑草を全部引っこ抜いてもらった後は、ただの荒れ地。まさに永田農法の生みの親、永田輝喜治氏が様々な野菜を育てておられる(と諏訪雄一氏の本で紹介されていた)土にそっくりでした。永田氏の畑の写真を見て、これならウチの庭と変わらない!と嬉しくなりました。
ここに住むまでは、観賞用の洋蘭や観葉植物を趣味としており、口に入れるものを自分で種や苗から作る経験はゼロでした。そんなド素人がどっさりガッツリを目指せたのは、諏訪氏の『おいしさのつくり方――永田農法を家庭菜園で--』に感動したからだと思います。
有機農法といっても、何が有機で、何が無機なのか、農薬を使わないのが有機なのか、それなら無農薬栽培ではないか、などと疑問を持つほど無知な私ですが、最終的に野菜が栄養として取り込むのは、窒素、リン、カリであるという永田農法式の説明は理解でき、だから液肥だけなのねとすんなり入り込めたのです。
もう一つ重要な要素は、プランター栽培に使用する土でした。
我が家はテラスハウスで、地面の畑とは別に、3階のテラスがプランター置き場となります。日照時間は、冬場では1日せいぜい4時間程度の畑とは違い、遮るもののない3階は野菜栽培に最適です。(と思ったのは最初だけ。問題点はあとから湧いてくるのです・・・。)
永田農法では、軽い日向土を勧めていますが、これが我が家の条件にピッタリだったのです。もし、普通の土を入れたプランターを3階まで運ぶとしたら・・・。まずプランター栽培はあきらめていたでしょう。
土については他項で述べますが、永田農法の場合は、他の農法に比べて、土に関する労働量が非常に少なくて済むことが最大の利点ではないでしょうか。日向土は数日水にさらしてから、しっかり乾くまで(2~3日以上)日光消毒すれば、何度でも使用可能です。プランター栽培に関しては、連作障害の心配をせず、経済的に清潔な土で野菜を作れるというのもありがたいことです。(3年生の私は、経済性をさらに追求して、プランター輪作の実験を始めました。)
永田農法の本には、「永田袋」と称する不織紙の植木鉢やトロ箱などが紹介されていますが、私個人の意見としては、そんなに変わったものに手を出さなくても、おうちにある普通の植木鉢で十分です。プランターを買うとしても、永田式で苗の根を切って植え付けるのなら、根は平面に広がるので、さほど深い鉢は不要です。
水やりや液肥の使用、マルチなど、実際に野菜を作ってみて発見したことを、少しずつでも、公表していきたいと思います。
ともかく、導入しやすいのが永田農法の良いところ。堆肥も化成肥料も、入れるのはいつでもできます。でも、お宅の土が、まっさらの何の肥料も堆肥も含まない【ただの土】だったら、とりあえず永田農法から始めてみても損はないでしょう。
ちなみに、永田農法用の液肥は、葉と根を育てる時期と花芽をつける時期の肥料を変える洋蘭の栽培にも重宝していることを付記しておきます。